離婚後の生活費が不安な方へ
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離婚前は,家庭内で配偶者をサポートしたり,育児に専念していたため,離婚後すぐには十分な収入を得ることが出来なさそうな場合や,そうでなくても,子どもを一人で育てていく場合などには,離婚後,最も心配なのはお金の問題でしょう。
そこで,ここでは,離婚後の生活苦をできるだけ回避するための方法を紹介します。
目次
離婚時に,財産分与や慰謝料,養育費をきちんと確保する
財産分与,慰謝料
離婚前第一に考えるべきことは,離婚時に配偶者から受け取るべきものはしっかり受け取っておくことといえます。離婚時に,きちんとした金額を確保することができれば,当面の生活を安定させることができ,その間にいろいろな準備をすることが出来るので,結果として後々の生活の安定にもつながります。
財産分与,慰謝料については,相手方配偶者の方も,できるだけ支払わずに自分の離婚後の生活に備えたいと思うでしょうから,当事者同士の利害が対立しています。このため,「財産は渡さない。さっさと出て行け。」あるいは「○○円だけ支払うが,それ以上は一切支払わない。」等と,根拠なく不合理なことを言われる場合も見受けられます。
そのような場合,まともに話が出来ない配偶者との交渉に疲れ果ててしまい,とりあえず離婚だけでもしたいとして,請求を諦めてしまう方もおられるのが現状です。
しかし,財産分与,慰謝料を請求するのは,当然の権利ですし,先にも述べましたが,その後の生活の安定にも深く関わってくることなので,諦めるべきではありません。
財産分与,慰謝料を,相手が支払わないと言っている場合,財産を隠されている場合,相手が不合理なことを言っているものの,話し合いが困難で相手に言いなりになってしまいそうな場合には,交渉のプロである弁護士にご相談いただいた方が良いかも知れません。
弁護士は,相手の不合理な主張に的確に反論することが出来ますし,隠している財産を探す手段も持っています(23条照会,調査嘱託など)。このため,弁護士がついたことで,相手はそれまで行っていた不合理な主張を取り下げることも多いでしょう。
また,仮に,交渉で話がつかないとなった場合でも,弁護士は,法律の専門家である以上,その後の,調停,訴訟という手続きに進んでいくことに何らの抵抗もありません。
このため,交渉が困難な相手方に対しても,粛々と,調停,訴訟の手続を進めていくことが出来,適正な財産分与,慰謝料を勝ち取ることが出来るのです。
なお,すでに離婚をしてしまった場合であっても,慰謝料については離婚後3年,財産分与については離婚後2年が経過するまでは請求することが出来ます。このため,離婚時にはとりあえず離婚できれば良いと請求を諦めてしまった方であっても,離婚後早い段階で請求するのが良いでしょう。
離婚時の,財産分与・慰謝料についての交渉に困難を感じておられる方,また,相手の提示する額が本当に適切か判断できずに不安を抱えている方につきましては,離婚後の生活の安定のためにも,弁護士にご相談いただければと思います。
養育費
お子様がおられる場合,養育費についても,離婚時にきちんと決めておく必要があります。
この点,親権者は定めなければ離婚できませんが,養育費は決めていなくても離婚自体は出来ます。このため,とりあえず早く離婚したい,とりあえず親権だけ確保できれば良いなどとして,離婚時には養育費を決定しない方もおられます。
ですが,離婚後,子どもを育てる上で,かならずお金はかかりますので,先を見据えて,養育費もきちんと決めておく必要があるでしょう。その際,公正証書にしておけば,相手が養育費の支払いを怠った場合に給与を差し押さえるなどの強制執行が出来るので,公正証書にしておくことが理想的です。
また,養育費については,離婚後もいつでも請求を行うことが出来ます。このため,養育費を定めずに離婚をしてしまった方,決めたけど公正証書にしていなかったために,相手が支払わなくなり困っている方は家庭裁判所に養育費の調停を起こすことを検討すると良いでしょう。
支援制度を利用(広島市で利用できる支援制度)
これまでは,離婚時に当面の生活費を確保することについて述べてきましたが,ここでは,広島市において離婚後(一部離婚前も含む)利用可能な公的制度について紹介します。
経済的支援
・児童扶養手当
対象:(実質的に)父または母が不在の家庭で児童を養育している母または父
問い合わせ先:各区福祉課
・特別児童扶養手当
対象:身体,知能または精神に中度以上の障害があるため,日常生活において常時の介護を必要とする20歳未満の児童を養育している方
問い合わせ先:各区福祉課
・児童手当
対象:中学校修了前の児童を養育している方(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:各区福祉課
・就学援助制度(学用品費などの援助)
対象:小学校,中学校,中等教育学校前期課程又は特別支援学校に在学する児童または生徒の保護者(離婚前後を問わず,一定の所得基準に満たない方)
問い合わせ先:各学校または教育委員会学事課
・ひとり親家庭に対する医療費補助制度(医療費自己負担分の補助)
対象:ひとり親家庭の母または父及びその児童等が医療機関等で受診した場合
問い合わせ先:各区福祉課
・こども医療の補助
対象:入院は中学3年生まで,通院は小学3年生までの子どもが,医療機関等を受診した場合(離婚前後を問わず,所得制限あり)
問い合わせ先:各区福祉課
・所得税,市・県民税の軽減
対象:配偶者と死別・離婚後再婚していない人のうち,一定の要件に該当する人
問い合わせ先:税務署または各市税事務所市民税係・税務室
・水道・下水道料金の減免
対象:ひとり親家庭等(所得制限あり)
問い合わせ先:各区福祉課または水道局各営業所
・国民年金保険料の免除
対象:自営業者などの第1号被保険者について一定以下の所得の方(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:各区保険年金課
・国民健康保険料の減免・軽減
対象:特別な理由により保険料を納めることが困難になった方
問い合わせ先:各区保険年金課
・高等学校等の就学支援金及び授業料等軽減
対象:県内の高校に通う生徒について,保護者が一定の収入に満たない方(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:広島県教育委員会教育支援推進課(公立),各学校または広島県環境県民
・私立小・中学校等授業料の減額
対象:県内の私立小・中学校に通う生徒について,保護者の収入状況により授業料を減額(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:各学校または広島県環境県民局学事課
・高等学校等の就学支援金及び授業料等軽減
対象:県内の高等学校に通う生徒について,保護者の収入状況により支給(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:(公立学校)広島県教育委員会教育支援推進課
(私立学校)各学校または広島県環境県民局学事課
・高等学校等の入学料の免除
対象:公立高校に入学する生徒で,保護者全員の住民税所得割が非課税の場合(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:広島県教育委員会高校教育指導課(県立),広島市教育委員会学事課(市立)
・奨学のための給付金(学用品等の授業料以外の教育費の助成)
対象:高校に通う生徒について,県内在住の住民税所得割が非課税の保護者(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:(国公立学校)広島県教育委員会教育支援推進課
(私立学校)各学校または広島県環境県民局学事課
・保育料・副食費の軽減
対象:ひとり親世帯
問い合わせ先:各区福祉課
・旅客鉄道株式会社通勤定期券の割引(鉄道の定期券の割引)
対象:児童扶養手当を受給している世帯の人及び生活保護世帯の人
問い合わせ先:各区福祉課
自立促進
・母子家庭等就業支援(講習会,セミナー,弁護士による特別相談)
対象:ひとり親家庭の親と子等
問い合わせ先:各区福祉課または広島市母子寡婦福祉連合会,広島市母子家庭就業・自立支援センター(就労相談など)
・自立支援教育訓練給付金(広島市が指定した講座を受講・終了すると教育訓練経費の6割(上限20万円)を支給される制度)
対象:ひとり親家庭の親
問い合わせ先:各区福祉課
・高等職業訓練促進給付金等(看護師等の資格を取得するため,養成機関で1年以上就業し,資格の取得が見込まれる場合に支給)
対象:ひとり親家庭の親
問い合わせ先:各区福祉課
生活・その他の支援
・ファミリーサポートセンター(子育ての援助)
対象:子育ての援助を受けたい人(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:広島市ファミリーサポートセンター事務局
・ひとり親家庭等日常生活支援(日常生活の世話や子育て支援)
対象:ひとり親家庭で,就職活動,疾病,残業等の事由により一時的に支援が必要な場合
問い合わせ先:各区福祉課または広島市母子寡婦福祉連合会
・母子生活支援施設(母と児童を共に保護し,生活・住宅・教育・就職・その他について援護する施設)
対象:母子家庭の母と児童
問い合わせ先:各区福祉課
・子育て短期支援(ショートステイ等)
対象:保護者が病気などで一時的に児童の養育が出来ない場合(離婚前後を問わず)
問い合わせ先:各区地域支え合い課または児童相談所
離婚後の生活も見据えた就職活動をする
はじめに記載しましたが,婚姻期間中,種々の事情から長い間社会で働いたことがない方については,離婚後の生活を安定させるため,就業先を確保することが大変重要です。
多くの方が,離婚を考えた時点で,離婚後の生活を見据えた就職活動を行っていらっしゃるのも事実です。
このように就職先を確保することで,離婚後の生活の目処が立ち,自信もつくため,離婚交渉を有利に進めていくことも出来ます。このため,離婚を考え始めた時点で,就職することを考えてみられることをおすすめします。
また,離婚後,子ども達のためにも,より安定した職に就きたいと考えておられる方は,前項でご紹介した,広島市の給付金を受給して,資格を取ることなども視野に入れると良いでしょう。
まとめ
経済的安定は,離婚後第2の人生を幸せなものとするための,最も重要な要素の一つです。これを果たすためには,離婚前からの準備が鍵となります。
つまり,離婚を考えた段階で,まずは,就職活動をして離婚後の生活の糧を得る準備をスタートし,離婚時には,相手方にしっかりとした金銭的請求を行いましょう。
離婚後は,離婚時に相手方から得た金銭で当面の生活を安定させつつ,困ったときには,様々な公的制度を活用することで,離婚後の生活は,軌道に乗っていくものと考えられます。
離婚を考えた場合には,早めの準備をおすすめいたします。
こんなお悩みをお持ちの方は下川法律事務所にご相談ください
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