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セックスレスを理由に離婚できる?

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

1 セックスレスとは?

日本性科学会によると,特別な事情がないにもかかわらず,パートナーとの間で,1ヶ月以上性交渉がない状態がセックスレスとされています。

仕事が忙しい,育児が忙しい,夫婦げんかをした,性欲がなくなった等の様々な理由から,性交渉がなくなる夫婦は多く,特に日本人においては,婚姻後のセックスレスの傾向は顕著であるとされています。日本人の半数以上が,自分はパートナーとの間でセックスレスであると回答したという調査結果も出ているようなので,日本人にとって,セックスレスは身近な問題であるといえます。

他方で,夫婦のあり方はそれぞれであって,単に性交渉がないということだけで,夫婦間に愛情がなくなったということではありません。このため,性交渉がなくても何らの問題もなく夫婦生活を送っている方もたくさんおられるでしょう。

このように,当事者双方が納得の上で,セックスレスの状態であるという場合には何らの問題も生じませんが,一方が性交渉を求めているのに,他方がこれを拒否し続けている場合には,大きな問題となることがあります。特に子どもが欲しいと考えている当事者にとっては,非常に重大な問題といえるでしょう。

2 セックスレスを理由とした離婚は可能?

それでは,セックスレスであることを理由に,相手に離婚を請求することができるのでしょうか。

・離婚理由とはなり得る

裁判上の離婚理由は民法で定められています。詳しくは,当事務所「離婚に必要な事由」のページをご覧いただきたいと思いますが,セックスレスは,「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条5号)に該当する可能性があります。

すなわち,裁判においても,「夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項である」と判断されており,セックスレスの状態が継続することは「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとされ,離婚が認められているケースもあるのです。

このため,セックスレスを原因に離婚ができる可能性はあります。

ただし,セックスレスの期間や問題解消の努力があったか等の状況によって,婚姻関係が破綻していることを立証する必要がありますので,単に短期間性交渉を拒まれた程度では難しいでしょう。

また,セックスレスの問題だけで離婚をした場合,たとえば「他に良いところもたくさんあったのに」等として,後悔されている方の声も少なくありません。
このため,まずは何が原因なのか,解決策を探したり,セックスがなくても今の生活の方が良いのではないか等を冷静に考えてみることも必要になってきます。

・正当な理由がある場合には離婚理由とはならない

夫婦間に性交渉がないことに正当な理由がある場合には,セックスレスを原因とした離婚をすることはできません。

たとえば,高齢等で自然に性交渉がなくなった,病気で性交渉ができない等の場合には正当な理由があるといえるので,離婚理由とはならないでしょう。

・証拠収集が困難

裁判で離婚を請求したい場合には,証拠が不可欠となります。
しかし,セックスレスについては,とてもセンシティブでプライベートな問題であることから,証拠を集めるのが難しいという事情があります。

この点,相手がセックスレスを認めているというのであればあまり問題になりませんが,裁判になった後で相手が意見を変えてくる場合がないとはいえないので,いずれにせよ事前に証拠を押さえておくことが必要でしょう。

とはいえ,どのような証拠を押さえうるかについては,ケースバイケースですので,証拠についてご不安がおありの方は,証拠の押さえ方等について,事前に専門家である弁護士に相談しておくと良いでしょう。

 

3 慰謝料は?

先述のとおり,セックスレスは一定の場合,婚姻関係を係属しがたい重大な事由として離婚原因になり得ます。このため,その原因を作った当事者には,有責配偶者として,慰謝料が発生する場合があります。

・セックスレス単独での慰謝料請求は認められたとしても数十万円から百万円程度

セックスレスは当事者にとってはとてもつらい問題ですが,離婚の際に発生する他の慰謝料の発生原因(不貞行為やDV)に比べたら,違法性や権利侵害の程度が低いと評価されます。

このため,慰謝料が認められる場合であっても数十万円から百万円程度とされています。

・離婚原因が複合的なケース

セックスレスのみが原因で離婚を請求したいという方は実際にはあまり多くなく,そのことが原因でけんかが絶えなくなった,モラハラやDVに発展しまった,不貞が潜んでいた,経済的な問題を抱えている等,複合的な理由で離婚したいという方が多い印象です。このことは,セックスレスのみが原因で,他に不満がない方が,離婚後に後悔する場合が少なくないということにも関連しているのかもしれません。

複合的な離婚原因の場合には,不貞やDV,モラハラ,それぞれの問題に応じて,慰謝料は加算されることになります。

4 専門家へのご相談を

セックスレスは重大な問題である一方で,とてもプライベートで相談しにくい問題でもあります。

ですが,とてもプライベートな問題だけに,ケースバイケースな部分が多く,どのような証拠があれば良いか,離婚が出来るのか,慰謝料が請求できるのかについて,一概にいうことはできません。

このため,ご自分のケースではどのようなものが証拠になり得るのか,ご自分のケースでは慰謝料請求することが出来るのか,セックスレス以外の事実によって,他に金銭的請求が出来ないか等については,離婚問題に精通している弁護士にご相談いただければと思います。

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執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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