menu

HOME/ 共働き夫婦の離婚問題

共働き夫婦の離婚問題

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

最近では,共働きの夫婦は珍しくないばかりか,むしろ多数派ともいえるかも知れません。
共働き夫婦の場合,妻が専業主婦などの事案とはまた違った注意点がありますので,以下,解説していきます。

○財産分与について

1 財産分与の割合

財産分与について,一般には,妻が夫に請求することをイメージされている方も多いかも知れません。

ですが,財産分与とは,夫婦が婚姻中に形成した財産を離婚時に分けることいい,「名義」を基準に考えますので,妻の「名義」の財産が多い場合には,妻の方から夫に対して財産分与される場合もあります。

割合については,通常,夫婦が,共有財産の全体額(妻と夫名義の財産を合計したもの)について,2分の1ずつを取得することになります。

この点,夫婦の収入に格差がある場合はどうなるでしょうか?

夫婦の収入に格差がある場合であっても,原則としては2分の1ずつの割合で取得する様になります。これは,一方の配偶者が高収入であったとしても,他方の配偶者がそれを支えて夫婦の共有財産の形成に協力したと考えられるからです。このため,数百万円程度の,一般に想定できる収入格差がある場合については,財産分与の割合は,原則どおり2分の1ずつとなるでしょう。

他方で,著しい収入格差がある場合や,他方配偶者の支えにより夫婦で共有財産を形成したといえない特殊な事情がある場合には,2分の1以外の分与割合が定められる場合もあります。例えば,配偶者が芸術家やプロスポーツ選手,芸能人等,特別な能力を有していることで,特別な収入を得ることができている場合,それは,婚姻前から持っていた能力であって,他方配偶者の貢献による財産形成とは評価できないということもあります。

これに加え,例えば,収入が同程度である,あるいは,ご自身の方が著しくとまでは言えないまでも収入が多いにもかかわらず,家事育児については,そのほとんどをご自身で担っていた様な場合については,他方配偶者は共有財産の形成に貢献した割合は低いと考えられるので,ご自身について,2分の1よりも多い割合が認められる可能性があるでしょう。

ただし,特殊事情が認められるかどうか,また,どのような割合の財産分与を求めるのかについては,が微妙な場合が多いため,ご自身のケースがこれに該当するのかどうかについては,弁護士にご相談いただければと思います。

2 夫婦別会計の場合

夫婦のそれぞれが自身の給与を管理したうえで生活費を折半したり,あるいは,それぞれに負担する経費の種類を決めて支払う(例:家賃は夫,食費や子どもの習い事代は妻,等等)などして,残りの給与についてはそれぞれに管理する様な形で,夫婦完全別会計の管理を行っている家計も珍しくないでしょう。

そのような場合には,収入の多寡や,一方が浪費家で他方が倹約家であった場合等には,それぞれの管理する預貯金額に差がでてくるでしょう。

例えば,ご自身が一生懸命倹約して貯金し,配偶者は浪費していたために預金を持っていなかった場合,ご自身の預貯金は分与の対象になるのでしょうか?

これについては,別会計で管理を行っていたとしても,原則,財産分与は2分の1となります。とはいえ,別財布にしている夫婦の場合には,お互いに自身管理の財産を開示したくない等としてそれぞれの名義の財産をそれぞれで取得すること合意するケースもあります。

他方で,他方配偶者に財産分与を求めたいような場合には,別会計で財産管理をしている以上,他方配偶者の財産を把握するのが難しい場合や,財産を隠されてしまう場合もあるでしょう。そのような場合に備えて,離婚が視野に入っている場合には,できるだけ相手方の財産を把握しておくことが重要です。また,把握方法が分からない場合や,隠された財産をご自身では探せない場合などは,離婚事件に精通した弁護士に相談するのが良いでしょう。

○年金分割について

共働き夫婦の場合にも年金分割をすることができます。

一般に妻が夫に対して請求するものというイメージがありますが,共働きで,夫婦双方が厚生年金に加入している場合,必ずしもそうはならないため注意が必要です。

まず,年金分割とは,年金(厚生年金部分)についても,婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産として,離婚の際に夫婦で公平に分け合うための制度です。このため,分割の対象となるのは,厚生年金加入期間のうち,婚姻していた期間に対応する部分のみとなります。

また,上記のように,夫婦で協力して築いた財産として分割する制度なので,夫婦双方が納めた額を合計して,それを分けることになります。このため,妻の方収入が多く,厚生年金保険料を多く納めていた場合には,夫からの請求により,妻の方の年金を夫に分割することもありえます。

夫の方はあえて年金分割を請求しないケースもあると思いますが,妻の方から,年金分割を請求したところ,実は,自分の年金額の方が多く,逆に,分割しなければならないということにならないように注意をしなければなりません。

どちらの方が多く厚生年金保険料を納めているのか知るためには,管轄の年金事務所に行って,年金分割のための「情報通知書」を発行してもらう必要があります。このため,気になる方は,事前に調べておくのが良いでしょう。

○まずはご相談を

>>共働き夫婦に関する当事務所の解決事例 一覧

>>弁護士費用

>>ご相談の流れ

こんなお悩みをお持ちの方は下川法律事務所にご相談ください

 

執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
当サイトをご覧いただきありがとうございます。当サイトでは、離婚に関するお悩みを持っている方向けに、離婚をめぐる様々な事柄について解説しています。いろいろな思いを抱えておられる方も、肩の力を抜いて、何でもお話しいただけると思いますので、お気軽にご相談いただければと思います。離婚・不貞慰謝料に関してお悩みの方はどうぞ気軽にご連絡ください。
|当事務所の弁護士紹介はこちら