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強制執行

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離婚の時に約束した慰謝料や養育費などを支払ってもらえない場合,一定の場合には,強制的に相手側の財産を差し押さえ,支払いを実行させる,強制執行という法的手続きをとることができます。

強制執行の対象となるものは?

給与(会社勤務の場合)

養育費の場合には,最もポピュラーな方法です。一度行えば強制執行申立を取り下げない限り効力が続きますので,養育費という毎月発生する債務の差し押さえに向いているからです。
ただし,給与は全額差し押さえられてしまうと,差し押さえられた側が生活することができなくなるため,通常は給与の4分の1まで(養育費の場合には2分の1まで)と金額が決まっています。

会社の売上(自営業の場合)

自営業の場合は,取引先に対する売上(債権)も強制執行の対象です。
一度の売上額が大きければ大きな額を差し押さえることができます。

預貯金

預貯金についても,大きな残高があれば,一気に大きな金額を回収することが可能です。
ただし,差し押さえのためには,相手の預貯金口座を把握しておかなければなりません。
銀行は,通常,本人以外の方に対して,口座の有無等を回答しませんから,口座の把握ができていない場合には,弁護士に依頼して,情報収集から行ってもらうのが一般的でしょう。

土地や建物などの不動産

土地や建物等の不動産についても,強制執行の対象です。具体的には,不動産を競売にかけて,そこから回収するということになります。
ですが,不動産の差し押さえには,多額の執行費用(予納金等)がかかります(競売した代金から執行費用を回収できますが,必ず回収できるというわけではありません)。このため,養育費等の回収のために不動産の強制執行を行うことはあまり一般的ではありません。
ただし,請求額が大きく他の財産が見当たらない場合や不動産の価値からして執行費用を十分に回収できそうだと思える場合には,検討の余地があります。個別の状況次第ですので,弁護士にご相談いただければと思います。

強制執行の手続

1.債務名義の取得

強制執行をするためには,慰謝料や養育費などの金銭の支払いの約束を証明できなければなりません。このような自分の債権の存在・範囲を証明した公的な書類のことを「債務名義」といいます。裁判所による判決,和解調書,調停調書,公正証書などがあります。
金銭の支払いについて口約束しかしていない場合や,夫婦間で書面にしているだけでは強制執行することはできません。このような場合には,家庭裁判所に対し,改めて養育費の調停申し立てを行うか,裁判で慰謝料などの支払いを求め,調停調書や判決という債務名義を取得しなければならなくなります。
せっかく約束したにも関わらず,そのような二度手間を負うことを避けるためにも,離婚時の取り決め(離婚合意書)を,公正証書や調停調書等にしておくことが慣用です。

2.執行文の付与

執行文とは,債務名義に強制執行できる効力を持たせるために必要な手続です。
調停調書や判決の場合には,その判決等を下した裁判所に申し立てて,書記官に執行文を付与してもらいます。
公正証書の場合には,作成した公証役場の公証人に,執行文を付与してもらうことになります。

3.債務名義の送達証明書

強制執行を開始するには,債務名義の正本か謄本をあらかじめ相手方に送達しなければなりません。公正証書の場合は公証役場で公正証書が作成された際,債権者の前で公証人から債務者に公正証書の謄本を手渡しすることで送達が行われたことになります。
また,判決や調停調書については,その判決等がなされたときに,裁判所から相手方に判決等の謄本が送達されています。
これらの送達がなされていることを証明する書類が送達証明書です。
公正証書の場合は当該公正証書を作成した公証人に送達証明の申請を行います。
また,判決や調停調書については,その判決等を行った裁判所に対し,債務名義の送達証明の申請を行います。

以上のとおり,強制執行はご自身でもできますが,法的知識や面倒な手続きが必要になります。せっかく公正証書を作成したのに,強制執行の手続がよく分からずに回収を諦めてしまいそうな方は,弁護士にご相談されることをお勧めします

こんなお悩みをお持ちの方は下川法律事務所にご相談ください


執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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