menu

HOME/ 熟年離婚にお悩みの方/ 【50代の熟年離婚】お金や年金分割のポイントを弁護士が解説

【50代の熟年離婚】お金や年金分割のポイントを弁護士が解説

この記事を読むのに必要な時間は約 11 分です。

50代の離婚を決断する人の特徴

50代は子どもが成人・独立するなどして、子育てが一段落する年代です。子育ての責任から解放され、自分らしい自由な人生を楽しみたいと考えるようになる人が多いのではないでしょうか。

それと同時に、人生の折り返し地点を通過したことを意識し、老後の生活について現実的な懸念を抱く時期とも言えます。現時点で相手との生活に苦痛を感じている場合には、残りの人生をこのままでいいのかと考え、離婚を意識するケースもあるでしょう。

50代での離婚のポイント①-財産分与

50代の離婚では、財産分与で今後の生活の糧を確保することが極めて重要です。

財産分与とは、夫婦が婚姻中に共同で築き上げた財産(「夫婦共有財産」といいます。)を離婚時に分け合うことをいいます。財産分与は離婚原因とは無関係に請求できるので、どのようなケースでも、夫婦共有財産がある限り請求することができます。

財産分与の割合は50:50

夫婦が婚姻中に形成した財産は、特別な事情がない限り、お互いに2分の1ずつの権利を有しています。なぜなら、通常、夫婦はお互いに助け合って生活しているため、財産の形成・維持に対する貢献度は同程度と考えられているからです。

したがって、婚姻中にどちらかの収入で取得した財産は、所有名義とは無関係に、基本的にすべて夫婦共有財産となります。「夫婦共有財産」に含まれるかは、当該財産の名義という形式面ではなく、婚姻期間中の夫婦の協力によって維持・形成されたかどうかという実質面によって判断されることになります。

例外

次のケースでは、例外的に財産分与の割合が2分の1にはなりませんので、ご注意ください。

① 特有財産がある場合

一つ目のケースは、夫婦どちらかに「特有財産」がある場合です。

特有財産とは、夫婦が協力して取得したものではなく、一方が固有の原因によって取得した財産のことです。特有財産には、例えば、独身時代に導入した自動車や相続した不動産などが挙げられます。特有財産は、夫婦が協力して取得したものとは言えないことから、財産分与の対象となりません。

また、結婚後に築かれた財産でも、元手の一部に特有財産が含まれている場合には、分与割合が修正されます。例えば、結婚後に購入したマイホームについて、購入資金の一部に夫が結婚前から有していた貯金を当てたような場合です。この場合、マイホームは財産分与の対象になるものの、夫の結婚前の貯金額に相当する部分はマイホームの評価額から差し引かれることになります。そのため、財産分与で妻が取得できる割合は、共有財産の2分の1よりも少なくなります。

② 貢献度・寄与度が明らかに違う場合

二つ目のケースは、財産の形成・維持に対する貢献度・寄与度が明らかに違う場合です。

夫婦の一方に特別な資格や能力があるために高収入が得られており、それによって非常に多くの財産が形成されているという場合には、その財産は固有の能力に基づいて形成された部分が大きいとして、夫婦の一方の取得割合が2分の1よりも少なくなります。

特別な資格や能力がある場合としては、医師、弁護士、スポーツ選手、会社の経営者などが挙げられます。

財産分与する「財産」とは?

夫婦が婚姻中に取得した財産は、財産分与の基準時である別居時に存在する限り、原則的に全て財産分与の対象財産となります。代表的な財産として、預貯金やマイホーム、自動車、家具・家電等が挙げられます。

50代の離婚では、各種の投資や保険、個人年金等の資産形成商品も高額となることが多いので、忘れずに分与を求めましょう。

50代の離婚で、資産形成商品と同様に忘れてはならないのが退職金です。退職金は給与の後払いとしての性質があり、退職金の形成には妻や夫も貢献しているといえることから、給与と同様に財産分与の対象となります。

まずは財産をピックアップ!

財産分与を適切に行うためには、対象となる財産をもれなくピックアップすることが必要となります。

離婚を切り出した後は、相手方が資産を隠す可能性があるため、できる限り事前に相手の財産を調べておくべきです。現時点で相手方の資産を十分に把握していない場合は、預貯金や投資、保険、個人年金等に関する書類が家の中にないかを確認してみましょう。

仮に、財産分与の対象となる財産が隠されてしまった可能性がある場合、弁護士会照会や裁判所の調査嘱託といった方法により相手方の財産を明らかにすることができますので、弁護士に相談することをおすすめします。

また、妻が長年専業主婦をしてきたようなケースで、通常の財産分与のみでは離婚後の生活に不安がある場合には、「扶養的財産分与」として多めの分与を求めることもできます。財産分与は、法律上も「一切の事情」を考慮して定めるものとされていますので(民法768条3項)、離婚後の扶養の要素も財産分与の中に含まれるものと解されています。もっとも、扶養的財産分与は、夫婦共有財産を分け合う形での財産分与や慰謝料があっても、なお生活に困る場合に認められるという補充的な性格を有しているので、注意が必要です。

50代での離婚のポイント②-年金分割

50代の離婚では、老後の生活費を確保するために年金分割も忘れずに行うようにすることが大切です。年金分割も、財産分与と同様に離婚原因とは無関係に求めることができます。

年金分割とは?

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金(従前の共済年金も含む)の納付記録を離婚時に夫婦で分割する制度のことです。

年金分割の制度が導入された目的は、配偶者間の給与に差があることにより、老後の年金受給額に格差が生じることを緩和することです。老齢基礎年金は夫と妻にそれぞれ支給されますが、厚生年金報酬比例部分は、被保険者だけに支給されます。夫婦の一方のみが正規社員として働いている場合には、正規社員のみが厚生年金の受給権者となるため、他方が専業主婦(夫)やパートなどの場合には、双方の年金受給額に大きな差が生じます。

老後の生活を支える年金制度により、離婚後も受給額の格差をなくして双方の生活を支えることができるよう、離婚時年金分割の制度が導入されたのです。

年金分割によって分割を受けた側は、将来の年金受給額が増えることになります。

年金分割の対象

年金分割で分割されるのは、支給される年金額そのものではなく、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録です。

年金分割の対象にできるのは、厚生年金と旧共済年金のみで、国民年金や国民年金基金はいずれも年金分割できないことに注意が必要です。

また、あくまで「婚姻期間中」の保険料納付記録が分割の対象となるため、結婚前の期間の納付記録については分割の対象にならない一方で、別居期間があっても分割の対象から控除されることはありません。

その他の準備

 

50代で離婚を決断するタイミング

50代は、子育てが一段落して自由な時間を楽しみたいと思うようになったり、人生の折り返し地点を迎えて老後の人生についても懸念を感じるようになったりする時期です。そのようなタイミングで、新たな人生を踏み出したいと、離婚を決断される方も多くいらっしゃいます。

もっとも、離婚後の経済的な基盤は大丈夫なのかといった不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。そのような不安から離婚を決断できないでいる場合は、一度、離婚問題に詳しい弁護士にご相談いただければと思います。

 

離婚を進める際の流れ

50代の離婚では、離婚後の生活設計をしっかりと立てておくことが非常に大切です。そこで、以下の準備を事前に進めておきましょう。

離婚後の住まいを決める

多くの場合は、賃貸住宅を探すことになりますが、家賃の支払いが厳しいという場合は公営住宅に申し込んだり、実家に戻ったりすることも検討してみると良いでしょう。

また、マイホームを購入している場合には、自宅の所有権を財産分与で譲ってもらい、住み続けるという選択肢もあります。この場合、住宅ローン残高の返済や固定資産税の支払いをしなければならない可能性もあるので注意してください。

離婚後の生活費等を計算する

離婚後に必要な生活費を知っておき、どのようにその生活費を工面していくのかを考えておく必要があります。財産分与について話し合う際に、離婚後の生活費等の試算結果を伝えて配慮を求めることも大切です。

また、離婚後の生活に備えて、ご自身が働きやすい職種を探しておくことも良いでしょう。

子どもへの説明

両親が離婚をすることは子どもにとってもショックな出来事です。

なぜ離婚をしたいのかや、離婚後の生活設計などを説明し、子どもの理解を得ることも必要です。

 

離婚を切り出す

このような準備が済んだら、夫や妻に離婚を切り出します。

その際、突然離婚を切り出され、相手がパニックになることも考えられます。

相手が話を聞いてくれる場合には、離婚に応じてくれるか、離婚に応じてくれる場合には離婚するための条件について確認することが大切です。

長年連れ添った夫婦であるからこそ、相手が離婚に応じなかったり、こちらの条件に応じなかったりと、話し合いが膠着状態になってしまうこともあるでしょう。

そのような際にも、弁護士に依頼すれば、離婚手続きや相手方との話し合いは弁護士が全て行います。弁護士が全ての話し合いや手続きを進めていくことにより、精神的な負担はかなり軽減されますので、一度離婚問題に詳しい弁護士にご相談いただければと思います。

 

まずはご相談を

当事務所へは、50代の離婚に関する離婚問題についても、数多くのご相談が寄せられています。離婚をしたいけれど今後の生活が不安で悩んでいる方、離婚を決意されている方、相手との交渉に限界を感じておられる方は、まずはご相談いただければと思います。

 

 

執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
当サイトをご覧いただきありがとうございます。当サイトでは、離婚に関するお悩みを持っている方向けに、離婚をめぐる様々な事柄について解説しています。いろいろな思いを抱えておられる方も、肩の力を抜いて、何でもお話しいただけると思いますので、お気軽にご相談いただければと思います。離婚・不貞慰謝料に関してお悩みの方はどうぞ気軽にご連絡ください。
|当事務所の弁護士紹介はこちら