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裁判離婚

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

夫婦間の話し合いによる離婚(協議離婚)も,家庭裁判所による調停(調停離婚)も成立しない場合に離婚をしたければ,家庭裁判所に離婚訴訟を起こし,離婚する旨の判決をもらうしかありません(裁判離婚)。
裁判離婚の場合,当事者間のどちらか一方が離婚に合意しなくても,法律上の離婚原因がある場合,裁判所は,離婚を認める判決を出します。そのため,どうしても合意ができない場合であっても,条件を満たせば,離婚をすることができるのです。
裁判離婚は,裁判という手続の性質上,法律の専門知識や技術が不可欠です。このため,裁判離婚をご本人で行うことは難しく,ご自身に不利になってしまう可能性が高いと言えますので,弁護士へのご依頼をお勧めいたします。

裁判離婚の条件

上記のとおり,裁判離婚には,当事者の合意が必要ありませんが,その一方で,法律上の離婚原因が必要です。法律上の離婚原因については,以下,「離婚の理由」の項から引用します。

1.不貞行為

肉体関係を伴う不倫や浮気で,これが離婚原因となることは社会的に認知されているでしょう。

2.悪意の遺棄

夫婦には,互いに協力して扶助する義務があります。このため,勝手に家を出てしまって家に戻ってこない,生活費を渡さない等の状態が継続しており,しかもそれが悪意(故意)によるものであれば,離婚理由に該当するでしょう。
なお,民法上悪意とは,単なる故意を指し,一般用語とは意味が異なりますので注意が必要です。

3.3年以上の生死不明

文字通り配偶者が行方知れずになり,生死も不明な場合です。
なお,7年以上にわたる場合は,離婚ではなく失踪宣告を申し立てる事も出来ます。確定すると配偶者は死亡したものとみなされ離婚したのと同じことになります。

4.回復の見込みがない強度の精神病

配偶者が精神病になったという理由だけでは認められません。夫婦はお互いに扶助義務があって,病気になったとしても支え合っていかなければならないからです。
ただし,精神病になって,医師の診断(専門医の鑑定)やそれまでの介護や看護の状況,さらに離婚後の配偶者の治療や生活などを含め,裁判官が回復の見込みがないと判断した場合には,離婚の理由になります。

5.その他の婚姻を継続しがたい重大な事由

1~4の事由には該当しないものの,婚姻関係を継続しがたい重大な事由がある場合には,離婚が認められることがあります。
典型的には,DVや多額の借金,長期間にわたる別居等がありますが,1~4には該当しない離婚事由について,事情を総合的にみて,婚姻関係を継続しがたい重大な事由があると裁判官が判断してくれれば離婚は認められるでしょう。

なお,法律には,1~4については,その事由(理由)が存在したとしても一切の事情を考慮して裁判官が婚姻の継続を相当と認めるときは,離婚を認めないことがあると記載されていることには注意が必要です。

裁判離婚の手順

離婚を求める理由や,求める離婚条件等を記載した訴状と,戸籍謄本,調停不成立証明書(裁判離婚の要件として,調停を前置することが求められているため)等の必要書類を添付して,ご自分または相手方の住所地を管轄とする家庭裁判所に提出する必要があります(調停の場合は相手方の住所地のみが管轄になりますが,裁判離婚の場合には,ご自身の住所地も管轄になります。)。
裁判離婚を行うに際して必要となる書類は様々ですし,どのような理由をどのように主張すれば離婚が認められるかという点において,訴状の作成には,専門的な法律知識が必要不可欠です。
このため,裁判離婚をご検討の方は,お早めに専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。

裁判離婚の注意点

裁判離婚では,原則として,離婚原因を作った当事者(有責配偶者)からの離婚請求は認められません。例えば浮気相手と結婚したいからといって,浮気をした夫が妻に対して,裁判で離婚を請求しても,原則として認められないのです。
しかし,最近では,事実上結婚生活が破綻し,修復が困難な状態で,婚姻を継続する必要がないと認められる夫婦を,いつまでも婚姻させ続けることは相当でないという考え(破たん主義)から,下記のような一定の条件を満すときは有責配偶者からの離婚請求が認められるケースも存在します。ただし,有責性のない場合に比べて,条件は厳しくなっています。
具体的には
・別居期間が同居期間と比較し,相当長い。
概ね10年以上の別居期間は必要でしょう。
・未成熟の子ども(親から独立して生計を営むことができない子ども)がいない。
未成熟子がいる場合,裁判所が有責配偶者からの離婚を認めた場合,保護が必要な子どもを親が見捨てた状況を裁判所が作ってしまうことになりかねず,そのような状況にならないかを裁判所は重視します。
・離婚請求された相手方が精神的,社会的,経済的に過酷な状態におかれていない。
特に経済的な状況を裁判所は重視します。経済的な観点はある程度客観的に判断できることに加え,
経済的に過酷とならないのであれば,上記の未成熟子が保護を欠く状況になりづらいということもあります。具体的には,離婚に当たり,有責配偶者が無責の配偶者に,財産の支払いをすることになっているか,また,無責の配偶者は,そもそも離婚後に収入が確保できる状態となっているのかといいう点からの総合的判断になるでしょう。

有責配偶者からの離婚請求が認められる要件は相当厳しくなっていますので,できれば,裁判にはよらず,協議,調停で離婚できることが望ましいといえます。このため,スムーズな離婚のためには,裁判等に至る前の早い段階で,弁護士にご相談いただくのが良いでしょう。

こんなお悩みをお持ちの方は下川法律事務所にご相談ください

執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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