管理職・役員の離婚問題について弁護士が解説
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会社の管理職や役員として働いている方、あるいはその配偶者との離婚を考えている方の中には、「一般的な会社員の離婚と何が違うのだろう」「役員報酬や株式、将来の退職金まで財産分与の対象になるのだろうか」と不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
管理職・役員の離婚では、収入が比較的高額であったり、給与以外に役員報酬、株式、ストックオプション、保険、退職金など複数の財産が存在したりするため、財産関係が複雑になりやすい傾向があります。また、会社経営に関わる役員の場合には、離婚問題が会社の経営に影響しないよう慎重に進める必要があります。
この記事では、管理職・役員の離婚で問題になりやすいポイントを、離婚問題を扱う弁護士がわかりやすく解説します。
目次
管理職・役員の離婚問題の特徴
管理職や役員の離婚では、一般的な給与所得者の離婚と比べて、財産や収入の内容を正確に把握することが重要になります。
たとえば、毎月の給与・役員報酬だけでなく、賞与、配当金、持株会の株式、自社株、ストックオプション、退職金、生命保険などを保有しているケースがあります。勤務先や会社との関係で取得した財産が多いほど、「何が夫婦の財産で、何が個人の財産なのか」を一つずつ整理しなければなりません。
また、役員の場合、単純に源泉徴収票だけを見ても実際の経済状況を十分に把握できないことがあります。役員報酬のほかに配当や事業所得等がある場合や、直近で報酬額が変更されている場合などには、過去の収入推移や変更理由も含めて検討することがあります。
会社のオーナーを兼ねる役員の場合には、さらに自社株の評価が問題となります。会社名義の預金や不動産は、原則として会社の財産であり、役員個人の財産とは別です。他方、役員本人が保有する自社株が夫婦の協力によって婚姻中に取得・形成されたものであれば、財産分与の対象となる可能性があります。会社の財産そのものと、自社株という個人財産を区別して考えることが大切です。
管理職・役員の離婚問題で主な争点となるもの
管理職・役員の離婚で特に問題になりやすいのは、①財産の範囲、②財産の評価額、③収入額の認定です。
①財産の範囲
まず財産分与では、原則として婚姻中に夫婦が協力して形成した財産が対象になります。名義が夫だけ、妻だけになっているからといって、当然に財産分与の対象外になるわけではありません。一方、婚姻前から持っていた財産や、相続・贈与によって取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象外です。
②財産の評価額
次に、株式や退職金などは、預金のように通帳残高を確認すれば終わるものではありません。非上場株式であれば市場価格がないため評価方法自体が争いになることがありますし、退職金であれば支給の確実性や婚姻期間に対応する部分の金額を検討する必要があります。
③収入額の認定
さらに、婚姻費用や養育費では、双方の収入が重要になります。裁判所では一般に「養育費・婚姻費用算定表」が参照されますが、役員報酬、給与、事業所得、配当等がある場合には、どの資料を基にどの金額を収入として扱うかが争点になることがあります。裁判所も、算定表を標準的な目安として参照しつつ、個別の事情を考慮して具体的な金額を検討すると案内しています。
管理職・役員の離婚における財産分与
①退職金
退職金は、まだ退職しておらず実際に受け取っていない場合でも、事情によっては財産分与で考慮されることがあります。
もっとも、将来受け取る可能性がある退職金の全額が、そのまま夫婦の共有財産になるわけではありません。一般には、退職金が将来支給される蓋然性や、勤務期間のうち婚姻期間が占める割合などを考慮します。
たとえば、勤続30年のうち婚姻期間が20年であり、退職金として3,000万円程度が見込まれる場合でも、3,000万円全額を単純に半分にするという考え方ではありません。婚姻前の勤務期間に対応する部分を除く必要がありますし、退職まで相当長期間ある場合には、将来の支給がどの程度確実なのかも問題になります。
管理職や役員の場合、通常の退職金とは別に役員退職慰労金制度が設けられていることもあります。退職金規程、就業規則、過去の支給実績、会社の決算資料などを確認し、具体的に検討することが重要です。
②有価証券
上場株式、投資信託、持株会の株式など、婚姻中に夫婦の協力によって取得した有価証券は、財産分与の対象となる可能性があります。
上場株式は市場価格を確認できますが、いつの時点の価格で評価するかによって金額が変動します。そのため、別居時や離婚時など、どの時点を基準として財産の範囲や評価額を考えるかが問題になることがあります。
特に注意が必要なのが、自社の非上場株式です。非上場株式には市場価格がないため、会社の純資産、利益、配当、将来の収益力などを踏まえて評価することになります。評価方法によって金額が大きく変わることもあるため、決算書や法人税申告書、株主名簿などの資料を確認する必要があります。
なお、自社株が財産分与の対象になったとしても、必ず株式そのものを元配偶者に渡さなければならないわけではありません。経営への影響を避けるため、株式は役員側が保有したまま、その評価額を踏まえて他の預金や代償金で調整する方法も考えられます。
③生命保険
生命保険についても、離婚時に確認しておく必要があります。特に、終身保険や養老保険など、解約した場合に「解約返戻金」が発生する保険は、財産的価値を持つため、婚姻中に形成された部分が財産分与の対象となることがあります。
ここでいう解約返戻金とは、保険契約を途中で解約した際に保険会社から戻ってくるお金のことです。
実際に保険を解約する必要があるわけではありません。基準時点の解約返戻金額を保険会社の証明書などで確認し、その金額を財産一覧に計上した上で、他の財産とまとめて分与方法を調整することができます。
会社役員の場合には、会社契約の保険と個人契約の保険が混在していることがあります。契約者、被保険者、保険料負担者、解約返戻金の帰属先を確認し、会社の財産なのか個人の財産なのかを区別する必要があります。
管理職・役員の離婚における婚姻費用・養育費
①婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が別居している場合などに、夫婦や未成熟の子どもが生活するために必要となる生活費のことです。離婚が成立するまでの間は、収入の多い側が少ない側に婚姻費用を支払うことになる場合があります。
裁判所では、双方の収入と子どもの人数・年齢などを基にした「婚姻費用算定表」が広く参照されています。算定表では、支払う側と受け取る側の収入を当てはめて、標準的な月額の目安を確認します。
管理職や役員の場合には、年収が高額であったり、給与以外の収入があったりするため、源泉徴収票だけで判断できない場合があります。また、別居の前後に役員報酬が減額されている場合には、その減額が会社の業績悪化によるものなのか、継続的なものなのかなどが問題になるケースもあります。
たとえば、「現在の月額報酬だけを見れば年収1,000万円程度だが、過去数年間は賞与や配当を含めて1,500万円前後の収入があった」というケースでは、どの金額を前提として婚姻費用を算定するかについて丁寧な検討が必要です。
②養育費
養育費は、離婚後、子どもが生活し成長していくために必要となる費用です。父母は離婚後も、それぞれの経済力に応じて子どもの養育費を分担することになります。裁判所の手続では、父母双方の収入、子どもの人数・年齢などを基に算定表が参照されるのが一般的です。
もっとも、算定表はあくまで標準的な金額の目安です。私立学校の学費、大学進学費用、高額な医療費など、個別の事情がある場合には、通常の養育費とは別に負担方法を話し合うことがあります。
管理職や役員など高収入の家庭では、子どもが従前どのような生活・教育環境にあったかも問題となり得ます。また、役員報酬の変動が大きい場合には、一時点の収入だけで将来の養育費を決めることが適切かという問題もあります。
離婚時には月額だけでなく、支払期間、大学進学時の費用、医療費、習い事や留学費用などについて、できるだけ具体的に取り決めておくことが将来のトラブル防止につながります。
管理職・役員の離婚問題を弁護士に相談するメリット
管理職・役員の離婚では、「財産が多いから難しい」というだけでなく、財産の種類ごとに評価方法や確認すべき資料が異なる点に難しさがあります。
弁護士に相談することで、預貯金、不動産、退職金、株式、保険などを整理し、どこまでが財産分与の対象となる可能性があるのかを検討できます。相手方が保有する財産の全体像が分からない場合にも、どの資料を確認すべきか、調停や訴訟の中でどのような資料提出を求めるかを検討できます。
また、役員側にとっては、離婚によって会社経営に不必要な影響が及ばないような分与方法を考えることも重要です。自社株そのものを移転するのではなく金銭で調整する、支払方法を工夫するなど、経営の継続性を踏まえた解決方法を検討する必要があります。
一方、役員の配偶者側にとっては、「会社のことは相手に任せていたので財産が分からない」ということも少なくありません。そのような場合でも、初めから諦める必要はありません。資料を一つずつ確認し、婚姻中に形成された財産を整理することが大切です。
離婚条件は、一度合意して離婚が成立すると、後から簡単にやり直せるものではありません。特に財産額や収入額が大きいケースでは、離婚届を提出する前に、財産分与・婚姻費用・養育費などを総合的に検討しておくことをおすすめします。
管理職・役員の離婚問題でお困りの方は弁護士法人晴星法律事務所へご相談ください
管理職・役員の離婚では、退職金、株式、生命保険、役員報酬など、一般的な離婚事件とは異なる論点が重なりやすく、「何から整理すればよいか分からない」と感じる方もいらっしゃいます。
また、同じ「役員」という立場であっても、勤務先企業の役員なのか、自社株を保有するオーナー役員なのかによって、確認すべき財産や解決方法は大きく異なります。
「相手から提示された財産分与額が妥当なのか知りたい」「退職金や自社株がどこまで対象になるのか確認したい」「高額な婚姻費用・養育費を請求されている」「会社への影響をできるだけ抑えて離婚したい」といったお悩みがある場合には、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
弁護士法人晴星法律事務所では、個別の事情や資料を確認しながら、今後考えられる選択肢や見通しを整理し、適切な解決を目指してサポートいたします。
管理職・役員の離婚問題でお悩みの方は、一人で抱え込まず、弁護士法人晴星法律事務所までご相談ください。
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