公務員の離婚におけるポイントを弁護士が解説
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目次
1 公務員との離婚の特徴
公務員は国家公務員と地方公務員に大別され、その中でさらに特別職、一般職に区別されています。公務員は、職種は様々ですが、“収入が安定しており、福利厚生が充実している”という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。
公務員の離婚原因とは?
公務員は、“安定した収入”のイメージがありますが、職種によっては数年おきに異動や出向により、単身赴任をせざるを得ない場合があります。単身赴任中に不倫に陥り、離婚に至るケースもあるようです。
また、公務員は職種によっては多忙・激務であり、家庭を顧みなくなる結果、離婚に至るというケースもあるようです。
2 財産分与について
公務員の場合、財産分与において以下にあげる「共済貯金」「退職金」が争点となりやすい傾向にあります。
⑴ 財産分与とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻中に共同で築き上げた財産を離婚時に分け合うことをいいます。夫婦はお互いに助け合って生活しているため、財産の形成・維持に対する貢献度は同程度と考えられています。したがって、夫婦が婚姻中に形成した財産は、特別な事情がない限り、お互いに2分の1ずつの権利を有しています。
⑵ 共済組合での貯金
ア 共済貯金とは?
公務員の場合、「共済組合」と呼ばれるところに貯金をしている場合があります。
共済組合とは、公務員を対象とした社会保険組合です。共済組合には、国家公務員共済組合連合会や公立学校共済組合など、さまざまな共済組合があります。
共済貯金とは、公務員の福利厚生のひとつで、毎月の給与や賞与から自分が決めた額を天引きして積立をする、財形貯蓄のようなスタイルの制度です。勤務年数が長いと、共済組合に貯蓄されている貯金が多額になっている場合があります。その他の預貯金と同様に、婚姻期間中にした共済貯金についても、財産分与を行う必要があります。
イ 共済貯金の残高の確認方法
もっとも、共済貯金の財産分与を請求するには、共済貯金をしているか否か、共済貯金をしているとして、その残高はいくらか、を把握しなければなりません。
配偶者が共済貯金をしているか分からない場合、給与明細を見れば、積立金が天引きされているかどうかを確認することができます。共済貯金があることが判明したら、配偶者に共済貯金の残高の開示を求めましょう。
共済貯金の残高を開示してくれない場合は、共済貯金に加入していると、基本的に半年に一度のタイミングで残高通知書が発行され、加入者に手渡しまたは郵送されるため、残高通知書を見ることができれば、共済貯金の残高を確認することができます。
共済貯金の資料の開示を拒否している場合には、裁判所の調査嘱託という手続きにより、共済組合に直接残高の開示を請求することができます。
⑶ 退職金
ア 退職金は財産分与の対象となるのでしょうか?
将来給付される退職金についても、退職金の形成には一方配偶者のみならず、他方配偶者も貢献しているといえることから、財産分与の対象となります。退職金は、将来支給されるものであり、勤務先の倒産や本人の減給、解雇といった不確定要素がありますが、不確定要素についてはその蓋然性が高いものを除いては考慮する必要はないとされています。
イ 公務員の退職金の特徴
公務員は給与収入が民間企業よりも安定している傾向があり、勤務を続けていると退職金が大きい額となることがあります。また、公務員は仕事の性質上、倒産などの事情により退職金が支払われないことは考えにくく、ほとんど確実に退職金を受け取れると言えます。したがって、公務員と離婚する場合には、退職金を財産分与の対象として判断される可能性が高いでしょう。
3 年金分割について
ア 年金分割とは?
老齢基礎年金は夫と妻にそれぞれ支給されますが、厚生年金報酬比例部分については、被保険者のみに支給されます。夫婦の一方が正規社員として働き、他方が専業主婦(夫)やパートなどで働いている場合には、正規社員のみが厚生年金の受給権者となり、双方の年金受給額に大きな差が生じます。そこで、配偶者間の給与格差により、老後の年金受給額に格差が生じるのを緩和する狙いで導入されたのが、年金分割の制度です。
年金には、①国民年金、②厚生年金、③旧共済年金があり、①国民年金を1階部分、その上乗せとして②厚生年金と③旧共済年金があり、その上の3階部分としていわゆる企業年金があります。年金部分の対象となるのは、このうちの2階部分です。
イ 年金分割の対象
年金分割により分割されるのは、支給される年金額そのものではなく、婚姻期間中に既払いとした年金保険料の納付記録です。もっとも、老齢基礎年金の受給資格(保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合。)を満たしていないと、納付記録が分割されても年金を受給できないことになります。
ウ 年金分割の方法
年金分割を行う場合には、①合意分割と②3号分割から方法を選択します。
①合意分割
合意分割は、夫婦双方の合意によって行う年金分割です。自分たちで合意できない場合には、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることにより、年金分割をすることができます。
②3号分割
3号分割は、配偶者間の合意もしくは家庭裁判所の審判がなくても請求ができる年金分割の制度です。2008年4月1日以降の第3号被保険者期間が年金分割の対象となります。ここで、第3号被保険者とは、第2号被保険者(厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の方)に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の方をいいます。
3号分割の手続きとしては、第3号被保険者が、①年金手帳または基礎年金番号通知書、②請求者の戸籍謄本、③請求日前1ヶ月以内に作成された相手方の生存を証明できる書類(戸籍謄本など)を添付し、年金事務所に請求の手続きをします。
エ 公務員と離婚する場合の年金分割
2015(平成27)年10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が厚生年金に統一されました。婚姻期間が長い場合には、共済年金・厚生年金をセットで分割することができます。
以前は、共済年金の部分についてはそれぞれの共済組合で年金分割の手続きをしなければなりませんでしたが、一元化以降は、共済組合でもお近くの年金事務所でも,手続きをすることが可能になりました。
4 養育費について
ア 養育費を増額することも可能
相手の職業が公務員であるか否かに関わらず、養育費は夫婦の話し合いで決めることができます。養育費を調停や裁判手続きで決める場合には、家庭裁判所が目安にしている算定表を基に算出することが一般的です。
もっとも、養育費は、離婚後もお互いの収入状況によって金額が変更される可能性があります。公務員の場合、一般的には勤続年数が長くなるにつれて給与が増えていくことになりますので、後から養育費を増額できる可能性があります。養育費の金額を変更するには、当事者間で話し合いを行うか、家庭裁判所に養育費増額調停の申立てをすると良いでしょう。
イ 養育費の取り立てがしやすい
また、離婚時に養育費の支払いを取り決めたにも関わらず支払いが履行されなかった場合には、強制執行により強制的に養育費を支払わせることができます。
公務員は将来的にも安定して給与を受け取れる見込みが高いですし、仕事を辞めない限り給与の差し押さえから逃れることができないので、ほとんど確実に給料を差し押さえることが可能です。
公務員と養育費の取り決めをする場合には、「公正証書」を作成するべきです。公正証書にしておけば、相手が支払いをしない場合にすぐに相手の給料を差し押さえられるからです。
5 広島で公務員との離婚をお考えの方はまずは下川法律事務所にご相談ください
離婚の場合には、親権者、養育費、財産分与等、決めなければならないことが多くあります。特に、公務員との離婚の場合には、財産分与や年金分割の手続きが一般の会社員と異なるため、注意が必要です。適切な対処をするためにも、一度、弁護士にご相談することをおすすめします。
当事務所へは、公務員との離婚に関する離婚問題についても、数多くのご相談が寄せられています。離婚をしたいけれど今後の生活が不安で悩んでいる方、離婚を決意されている方、相手との交渉に限界を感じておられる方は、まずはご相談いただければと思います。
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