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学費の滞納が心配?離婚後に私立学校の学費を確実に支払わせる方法

この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

離婚後、子供が私立学校に通い続ける場合、学費の負担が大きな問題になります。特に、相手が離婚後に学費を支払わないのではないかと心配される方も少なくありません。学費は通常の養育費とは別に考慮されることが多く、高額な学費を安定的に支払ってもらうための取り決めは非常に重要です。この記事では、離婚後に私立学校の学費を確実に支払ってもらうための方法と、その対策について詳しく解説します。

  1. 私立学校の学費は養育費とは別に考慮される

まず、私立学校の学費は通常の養育費に含まれるのでしょうか。

一般的に、養育費は子供の生活費や基本的な教育費、医療費などをカバーするものですが、公立学校を前提としているため,私立学校の学費は基本的には養育費の算定基準には組み込まれていません。

そのため、私立学校に通う子供の学費については、離婚協議の際に別途取り決めを行う必要があります。この取り決めが不十分であったり、曖昧であったりすると、学費の支払いが滞るリスクが高まります。そこで、まずは、適切な取り決めを行うことが重要です。

  1. 離婚時の学費負担の取り決めが重要

離婚後に学費を確実に支払わせるための第一歩は、離婚協議の際に学費負担について具体的に取り決めを行うことです。離婚時にどのような内容を協議し、書面に残しておくかが、後々のトラブルを防ぐための大きなポイントとなります。

(1) 離婚協議書に明記する

離婚時に学費の支払いに関する取り決めを行った場合、離婚協議書にその内容を具体的に記載しておくことが非常に重要です。これにより、学費の支払義務を明確にし、後に支払いが滞った場合でも法的に対処しやすくなります。

離婚協議書には、以下のような内容を具体的に盛り込む必要があります。

  • 学費の総額や支払期限
  • 支払い方法(例えば毎月の分割払い、半年ごとの支払いなど)
  • 支払いが滞った場合の対処方法(例えば遅延利息の適用、保証人の設定など)
  • 将来的な学費の変動に対する対応(私立学校の学費が値上がりした場合の対応)

ただし,離婚協議書それ自体は,後述する公正証書のような執行力を持つものではないということに注意が必要です。

(2) 公正証書を作成する

また、離婚協議書を作成する場合には,当該書面を公正証書とすることが推奨されます。公正証書とは、公証人役場で作成される執行力を持つ文書であり、支払い義務が履行されない場合には、相手方の財産に対する強制執行を容易に行うことができます。

すなわち、相手方が学費を支払わなかった場合に、当該公正証書を根拠として、相手の給与や財産を差し押さえることが可能となります。このため、学費滞納のリスクを大幅に減らすことが可能です。

(3)調停を起こす(調停調書にする)

当事者同士での話し合いによる解決が難しい場合には,家庭裁判所に養育費の調停(離婚時には離婚調停)を起こすことが考えられます。

話し合いがうまくいき,調停が成立すると,調停調書が作成されます。この調停調書には,公正証書同様に執行力があります。このため,学費について,適切な定めがなされているにもかかわらず,これに反して,学費の支払いが滞った場合には,給与の差し押さえ等の強制執行を行う事ができます。

  1. 学費滞納が発生した場合の対処方法

では、実際に学費の滞納が発生した場合、どのように対処すればよいのでしょうか?学費の支払いが約束されていても、支払いが遅れたり、滞ったりすることは珍しくありません。滞納が発生した場合、次のようなステップで対応することが考えられます。

(1) 支払いの催促を行う

まずは、支払い義務者に対して速やかに支払いを催促します。学費の支払い期限を過ぎても支払いが行われていない場合、電話や書面で催促を行い、状況を確認することが重要です。支払いが遅れる理由が正当なものであれば、分割払いや支払い猶予などの対応も考慮できますが、相手が支払いを拒否する場合は、法的措置を検討します。

(2) 裁判所での履行勧告・履行命令の申立

養育費に関する調停や審判が行われていた場合で、これにより定められた養育費が支払われない際には、取り決め通りに養育費を支払うよう、家庭裁判所から義務者に促してもらうことができる制度を履行勧告といいます。強制力はないものの、家庭裁判所を通じた手続きである為、相手方に対して心理的な圧力を加えることが可能となり,事実上履行が促されることとなります。

また、履行勧告によっても養育費が支払われない場合には、家庭裁判所に対し履行命令を行ってもらうことができます。義務者は、この命令に従わない場合には、10万円以下の過料が科されるため、一定程度の強制力があると考えられます。

(2) 強制執行の申立て

学費支払いに関する公正証書や調停調書がある場合に、相手方が支払いを怠った場合は、すぐに強制執行を申立てることができます。強制執行では、相手方の給与や銀行口座、財産を差し押さえることが可能です。公正証書があることで、裁判を行わずに迅速に強制執行に進めるため、滞納問題がスムーズに解決します。

 

  1. 学費滞納を防ぐためのその他の対策

学費滞納を未然に防ぐためには、離婚時の取り決めやその後の対策が重要ですが、さらに次のような方法を検討することも有効です。

(1) 事前に保証人を立てる

学費の支払いについて、不安がある場合は、保証人を立てることが一つの方法です。たとえば、支払い義務者の親族や信頼できる第三者を保証人として設定し、支払いが滞った場合には保証人が代わりに支払うという取り決めを行うという方法が考えられます。

保証人を立てることで、学費未払のリスクを分散し、相手方が支払いを怠った場合でも学費の支払いを確保できます。

(2) 子供の進路変更を考慮する

最悪の場合、学費が長期間滞納され、支払いが困難な状況が続くこともあります。その際は、子供の進路変更を検討することも一つの解決策です。私立学校の学費が負担となる場合、公立学校への転校を考えることが現実的な選択肢となります。

もちろん、子供の希望や学習環境を優先することが重要ですが、経済的な状況に応じて柔軟に対応することも必要です。

  1. まとめ

私立学校の学費は、離婚後も継続して支払われるべき重要な費用ですが、支払いが滞るリスクも無視できません。離婚時に明確な取り決めを行い、公正証書の作成や保証人の設定などを通じて、学費の支払いを確実にすることが大切です。

他方で、離婚後の学費滞納問題は、個人で対処するには難しいケースが多く、法的な知識や手続きが必要になることがほとんどです。また、離婚の際の取り決め方法によっては、滞納の際対処できないということも十分に考えられます。そのため、学費についての取り決めを行うに際しては、弁護士に相談することが重要です。当事務所では、離婚問題に精通した弁護士が、学費確実に負担してもらうための公正証書作成や、支払いが滞った場合の対処を行っております。私立学校の学費問題でお悩みの方は、弁護士にご相談いただくことで、安心して子供の教育を続けることができると思われますので、お早めにご相談いただければと思います。

執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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