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熟年離婚の際に注意すべき配偶者の退職金対策

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

熟年離婚を考えるうえで、避けて通れないのが「退職金」の問題です。
婚姻期間が長く、配偶者が定年退職を間近に控えているようなケースでは、退職金の金額が非常に大きくなるため、財産分与の対象としてどのように取り扱うかが重要な争点となります。

実際、当事務所でも、
「離婚を申し出たら夫が退職金を隠そうとしている」
「離婚するまでに退職金が出ていないけど、請求できる?」
「そもそも退職金は財産分与の対象になるのか?」
というご相談を多くいただいています。

この記事では、熟年離婚における退職金対策について、法律上の取り扱い、よくあるトラブル、分与の方法、そして弁護士に依頼するメリットまで、分かりやすく解説いたします。

1.退職金は「財産分与」の対象になるのか?

結論から言えば、退職金は財産分与の対象になります
たとえ退職金がまだ支給されていなくても、「将来支払われる見込みがある退職金」についても、一定の条件のもとで財産分与の対象に含まれます。

なぜなら、退職金は労働の事後的対価、賃金の後払いであるとされているからです。

  • 退職金が財産分与の対象になる要件
  • 婚姻期間中に形成された退職金であること
  • 退職金の支給が現実的に見込まれていること(退職間近、あるいは勤務継続中であること)
  • 将来の支給額がある程度見積もれること

つまり、退職金が支給される可能性が高い場合には、その退職金は財産分与の対象となります。たとえば「夫が定年まであと1年」で「すでに勤続30年を超えている」といったケースでは、退職金は将来支給されるものでも、財産分与に含まれることがほとんどです。

ただし、婚姻前の勤務年数分や、結婚後の短期間しか働いていない退職金は分与対象外になる可能性がありますので、注意が必要です。

2.熟年離婚で多いトラブルと落とし穴

退職金をめぐる熟年離婚では、次のようなトラブルが非常に多く見られます。

(1)退職前に離婚し、退職金を「ないもの」にされる

もっとも多いパターンがこれです。夫(または妻)が離婚を前提にしていても、退職金を受け取る前に離婚を成立させようとし、「まだもらっていないから財産はない」と主張するのです。

退職金は、上述のように、将来支払われる見込みがある場合にはまだ受け取っていなくても財産分与の対象となる「潜在的財産」ですが、このことを知らなければ、受け取る権利を失ってしまう危険があります。

(2)退職金を意図的に隠す

退職金の額や支給日、見込み額を教えずに「そんなに出ない」などと過少申告するケースも少なくありません。見積書を提示しない、社内資料を見せないなど、交渉を拒む例もあります。

(3)退職金の全額がもらえるとは限らない

分与の対象となるのはあくまでも「婚姻期間中に形成された部分のみ」であり、すべてを半分にするわけではありません。婚姻前に積み立てられた部分の退職金は、財産分与の対象とはなりませんので、注意が必要です。

3.退職金の分け方と算定方法

退職金を財産分与するには、その見込み額を明らかにする必要があります。以下のような資料が参考になります。

  • 必要な資料
  • 就業規則(退職金規程)
  • 勤続年数・役職・年齢
  • 退職金試算表(会社で発行可能)
  • 過去の退職者の例(社内資料)

これらの情報をもとに、財産分与の対象となる退職金額を算定します。

財産分与の対象となる退職金額は、基準時(原則として別居時)に自己都合で退職したと仮定した場合の退職金額から、婚姻時までに蓄積された額(婚姻時に退職したと仮定した場合の退職金の額)を控除した額となります。

具体的には、【基準時(別居時)に退職したらもらえるはずの退職金:1000万円】、【結婚時に退職したらもらえるはずの退職金:200万円】として計算すると、「婚姻期間中に形成された退職金」の額は、

1000万円-200万円=800万円

となり、妻の取り分はこれに2分の1をかけた400万円となるのが原則です。

4.支給前の退職金はどう分けるのか?

退職金が支払われるのは将来である場合、財産分与の支払時期はいつになるのでしょうか?

(1)将来の支給を見込んで「退職金相当額」を今分ける

原則として、財産分与は離婚にあたっての清算なので、即時に支払うべきです。

退職金の支給見込み額を計算し、現時点の財産と合わせて清算する方法で、退職金分を現金などで代償するか、ほかの財産(不動産、預貯金)で調整することもあります。

(2)将来、退職金が支給された時に「その一部を支払う」ことを合意しておく

もっとも、退職金は高額になることも多く、支払能力が十分でないため、退職金相当額を今すぐに分与できないという場合もあります。

その場合、「退職したら〇〇万円を支払う」と明記した合意書を取り交わす方法があります。これは公正証書にしておくことで、支払いがされない場合に強制執行が可能になります。

5.退職金対策として弁護士に依頼するメリット

退職金に関する離婚トラブルは、金額が大きい分、相手の反発や隠蔽、情報不開示が起こりやすいのが現実です。そのような場合、弁護士に依頼することで、財産分与で退職金を受け取ることができなかったという事態を避けることができます。

弁護士が代理で財産分与の交渉を行うことで、適切な退職金見込額を算定し、相手方に提示することが可能です。

また、相手方が退職金の試算表や資料等の提出を拒んでいる場合、弁護士からの請求で開示に応じてくれる場合もあります。相手方が任意での資料開示を頑なに拒む場合、勤務先へ弁護士会照会をしたり、裁判所へ調査嘱託を申し立てたりすることも可能です。

そして、退職金を財産分与するという合意があるにも関わらず、相手が支払いに応じない場合、強制執行をすることも可能です。

特に熟年離婚では、財産を確実に確保しなければ、その後の老後の生活が成り立ちません。退職金の分与は、あなたの「第二の人生」の安定を左右する重要な問題です。

退職金に関してトラブルとなる可能性がある場合、早期に弁護士に相談することが大切です。

◆ まとめ|退職金の問題は、離婚前に「戦略的に備える」ことが大切です

熟年離婚において、退職金は見過ごせない重要な資産です。
しかし、退職金が実際に支給される前に離婚が成立してしまえば、本来受け取れたはずの財産を失うリスクがあります。

  • 退職金が財産分与の対象になるかどうか
  • どの程度の金額が見込まれるか
  • どのタイミングで分けるべきか

これらを正しく理解し、法的に有効な形で合意を残しておくことが、後悔しない離婚の第一歩です。

◆ 退職金をしっかり確保したい方は、まずは弁護士にご相談ください

「夫が退職金を隠している気がする」
「離婚前に退職金が支払われないか不安」
「きちんと分けてもらえるか心配」

――そんな不安をお持ちの方は、熟年離婚に強い弁護士が在籍する晴星法律事務所にご相談ください。

当事務所では、退職金を含む財産分与に精通した弁護士が、あなたの人生設計に寄り添い、法的に確実な方法で支援いたします。

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執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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