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夫の定年まであと数年しかありませんが、離婚をするのは定年まで待った方が良いでしょうか?【熟年離婚のタイミングと経済的問題】

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

熟年離婚とは、長年連れ添った夫婦が離婚を決意するケースですが、特に夫の定年退職を目前に控えた時期において、妻の方が離婚を考えることが多いことが特徴です。

このようなタイミングでの離婚は、妻の側としては、老後の生活なども考え、大きな経済的不安を伴いますが、同時に新たな人生のスタートを切るチャンスでもあります。本記事では、退職金や年金分割といった経済的要素を中心に、熟年離婚を考える際に知っておくべきポイントについて詳しく解説していきます。

熟年離婚を考える理由と背景

熟年離婚を検討する背景には、さまざまな理由が存在します。長年にわたる夫婦生活の中で生じた価値観の違いや、子供の独立によって生じる空の巣症候群、さらには夫の退職後の生活設計に対する不安などが主な要因です。特に、妻が感じる疎外感や孤独感、夫婦間のコミュニケーションの不足が、離婚の引き金となることが少なくありません。

また、女性の社会進出が進む中で、妻が経済的に自立するためのスキルやキャリアを持っているケースも増えており、離婚を選択することが現実的な選択肢となっています。しかし、特に長年主婦として家庭を支えてきた女性にとっては、離婚後の生活に対する経済的な不安が非常に大きいものです。このような状況で、夫の退職金をどう扱うかが、離婚のタイミングを決定する重要な要素となります。

退職金と財産分与の基本的な考え方

夫の退職金は、婚姻期間中に蓄積された夫婦共有の財産とみなされ、離婚時に財産分与の対象となることが一般的です。このため、妻が離婚後の生活を安定させるために、退職金を重要視するのは当然のことです。しかし、退職金をどう分与するかについては、様々なケースがあり、一概に決まった方法があるわけではありません。

まず、夫が定年を迎える時期が近づいている場合、その退職金がどの程度の額になるのかを把握することが重要です。退職金の額は、夫の勤続年数や職種、勤務先の規定によって大きく異なります。一般的には、定年退職時に支給される一時金としての退職金が大きな金額を占めることが多いですが、退職金を受け取る時期が先延ばしになる場合もあります。

離婚時において、退職金がまだ支給されていない場合でも、その退職金が将来の財産として確実であれば、財産分与の対象となり得ます。裁判実務では、夫が概ね10年以内に退職する見込みがある場合、その退職金が財産分与の対象として認められるケースが多いです。ただし、夫が退職後に退職金を受け取るまでに時間がかかる場合、財産分与の方法やタイミングについては、夫婦間の協議や裁判所の判断に委ねられます。また、分与の対象となる退職金は、婚姻前に働いていた期間に相当する部分は含まれず、婚姻期間中の部分のみが対象になります。また、基準時(離婚時OR別居時)に自己都合退職したと仮定して算出した金額が分与の対象とされることが一般的です。

退職金受給のタイミングとそのリスク

退職金を受給するタイミングで離婚を決断することには、経済的な利点がある一方で、いくつかのリスクも伴います。例えば、夫が定年前に健康上の問題や経済的な理由で早期退職を余儀なくされる場合、予想していた退職金の額が減少する可能性があります。また、夫の健康上の問題が発覚している以上、離婚の切り出しがむずかしくなったり、相手が素直に離婚に応じてくれなくなる可能性もあります。

さらに、離婚を先延ばしにすることによる精神的な負担も無視できません。長期間にわたって離婚を考え続けることで、妻自身の精神的健康が損なわれる可能性があります。特に、夫婦関係がすでに破綻している場合には、離婚を早めに決断し、新たな生活を始めることで、精神的な安定を取り戻すことができるかもしれません。少しでも早く離婚を決断することで、5で述べるような再就職による生活の安定も図りやすくなるとも言えます。

年金分割による離婚後の経済的安定

離婚後の生活を支えるためには、退職金だけでなく、年金分割も重要な考慮要素です。年金分割とは、夫が受け取る予定の厚生年金や共済年金を、離婚時に妻がその半分を受け取ることができる制度です。この制度を利用することで、離婚後も一定の収入を確保できるため、経済的な安定を図ることが可能です。

年金分割の具体的な仕組みは、婚姻期間中に夫が積み立てた年金の一部を、離婚時に妻が受け取ることができるというものです(双方が社会保険をかけていた場合には合計額を2分の1にすることになります。)。これにより、妻は離婚後も毎月の年金収入を得ることができ、特に退職金の受給が不確定な場合や、夫が健康上の問題で早期退職するリスクがある場合には、年金分割が経済的な安定を支える重要な要素となります。

年金分割の手続きは、夫婦間の協議や家庭裁判所での調停・審判によって進められ、最終的には裁判所が按分割合を決定します。この按分割合に基づいて、夫の年金の一部が妻に支給されるため、離婚後の生活設計において非常に重要な役割を果たします。

離婚後の生活設計と再就職の準備

離婚後の生活を考える際には、経済的な面だけでなく、再就職や社会的なつながりの確保も重要な要素です。特に、長年主婦として家庭を支えてきた女性にとって、離婚後の再就職は新たな挑戦となりますが、それが経済的自立を実現するための鍵となります。

再就職を考える際には、まず自身のスキルや経験を見直し、それを活かせる職場を探すことが大切です。また、必要に応じて職業訓練や資格取得を検討することも、新たなキャリアを築くための一助となります。さらに、地域のハローワークや職業訓練校を活用することで、再就職に向けたサポートを受けることができます。

再就職が難しい場合には、パートタイムやアルバイトなどからスタートし、徐々に経験を積んでいくことも一つの方法です。経済的な自立を目指すことで、離婚後の生活における不安を軽減し、自分自身の生活をコントロールする力を身につけることができます。

離婚時の心理的サポート

熟年離婚においては、経済的な問題だけでなく、心理的なサポートも非常に重要です。離婚は人生の大きな転機であり、その決断には多大なストレスが伴います。特に、長年連れ添った夫との離婚は、感情的な葛藤や寂しさを感じることが多く、自身が離婚を望んだ立場とはいえ、その決断が心身に与える影響は決して小さなものではありません。

ですが、長年にわたりストレスを抱えている状態が今後も続くことに比べれば、離婚時の心身への影響は、一時的なものと言えるでしょう。少しでも早く決断をして次の人生に踏み出すことが、最終的に良い人生につながると前向きに考えることが必要です。

離婚時のストレスへの対応としては、信頼できる友人や家族のサポートを得たり、必要に応じてカウンセリングを受けることも有効です。カウンセラーは、離婚に伴う感情の整理を手助けし、前向きに新しい生活を始めるための支援をしてくれます。

熟年離婚を考える方へ弁護士からのアドバイス

熟年離婚は、経済的な不安や将来への不確実性が伴う一方で、新たな人生のスタートを切るための重要な一歩でもあります。退職金や年金分割といった財産分与の仕組みを理解し、自分にとって最も適したタイミングでの離婚を決断することが、将来的な経済的・精神的安定を確保するために欠かせません。

しかし、離婚に伴う法的な手続きや財産分与の詳細については、専門的な知識が必要です。特に、将来の退職金については、必ず支払われるものと決まっているわけでもないですし、計算方法も複雑で必ずしも一義的に定まっているわけではありません。また,その支払い時期についてもケースバイケースになるというものでもあるため、自身の権利を適切に主張するためには、経験豊富な弁護士のサポートが不可欠です。法律の専門家と相談しながら、最適な判断を下すことが、後悔のない決断をするための鍵となります。

当事務所では、熟年離婚に関する豊富な経験と専門的な知識を持った弁護士が、あなたの状況に応じた最適なアドバイスをいたします。経済的な不安を抱えている方、離婚のタイミングについて悩んでいる方は、ぜひ一度ご相談ください。お一人おひとりの状況に合わせた解決策をご提案し、あなたの新しいスタートを全力でサポートいたします。

ご相談は、お気軽にお問い合わせください。あなたの未来をより良いものにするための第一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。

執筆者情報

下川絵美(広島弁護士会)
下川絵美(広島弁護士会)
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